契約書と公正証書

契約書には、私文書であるものと公正証書のものとがあります。

私文書は、普通の私人(会社も含めて)が作成する文書であり、公正証書は公証人の作成する文書です。両者は、法律上その取扱いを異にします。

公正証書である契約書は、私文書と違って、公文書であるから、訴訟になったときでも、当然真正に成立した文書として取り扱われます。

私文書の場合と違って、公正証書はほとんどその成立の真正を争うことは不可能であり、常に証拠能力をもつと言って差し支えないといえます。

文書の保存私文書であると、保存中に火災・事故等によって減失・紛失して取返しのつかぬ事態も生じ得るが、公正証書の場合は、原本を公証人役場が保存し、公正証書の作成を嘱託した者はその謄本の交付を請求することができるから、滅失・紛失に対する不安がありません。

公正証書について

1(効力)

契約書は、相手が契約に違反したとき、その契約書を執行官に持参しても、執行官はその契約書で相手の財産を差し押さえるたり、競売したりすることは出来ません。

その契約書を証拠として訴訟を起こし、勝訴の判決を得たうえで、強制執行をする ことになります。

おなじ契約書でも、これを公証人が作成し、公正証書にすれば、相手が契約に違反 したとき、訴訟を提起して判決を得る必要はありません。

その公正証書じたいが判決とおなじということになり、執行力を発揮し、相手の財産を 直ちに差し押さえる等ができます。

多少面倒でも、公正証書を作っておけば、訴訟に関する費用と時間が節約できます。

ただし、その契約の種類や性質に応じて、その契約を公正証書にすることが、 それほど利益でないことがあります。

貸金契約、債務弁済契約のように、契約の目的が「金銭の取立てを目的」とする 契約が公正証書に向いています。

法律が公正証書に対して認めた執行力は金銭を強制的に取り立てる力を与えているためです。

金銭の支払いばかりでなく、手形、株券などの交付を目的とした契約も、これを公正証書にしておきますと、訴訟を起こさず、強制執行ができます。

2(要件)

たとえ金銭の取立てを目的とした公正証書でも、次に掲げる二つの要件が欠けると強制執行することができません。

アその公正証書に一定金額が明記されているか、公正証書自体からその金額を 算出できるように記載されたものであること

イその公正証書に私が契約違反したときに、強制執行を受けても異議はありませんという条項「執行認諾条項」が記載されていることしたがって、上記ア、イの 要件が欠けていますと、強制執行することができません。

これでは何の為に公正証書を作ったか、意味のないこととなります。

公正証書は、契約当事者の双方か、または代理人が公証役場に行って公証人 に作成してもらいます。

(3)

公正証書に与えられた執行力は金銭を取り立てる力しかありませんので、借地借家契約が終了したのにいつまでも居すわっている借地人、借家人を強制的に立ち退かせる明け渡しの執行力や、預けた物をいつもでも返してくれない借主から強制的にその物を返還させる執行力などは、公正証書には認められていません。

せっかく公正証書を作っておいても、訴訟を起こし、その判決を受けなければ、土地・建物の明け渡し、目的物の引渡し等の目的を達することができません。


愛知県行政書士会所属行政書士高尾事務所 Copyright(C) 2003 MT.Office All Right Reserved