契約書の書き方

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  • 契約書の前書き/後書き
  • 契約の締結日
  • 契約の当事者
  • 契約用語の一口メモ
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    契約の当事者

    契約の当事者について

    1 契約の当事者

    契約について、まず契約の当事者の確定ということがあります。

    一見すると、ある契約の当事者がだれであるかということは、極めて自明であるように見えますが、実務においてはそう簡単にはいかない場合があります。

    契約の当事者がだれであったかをめぐってトラブルになったりすることがあります。

    契約の当事者とは、形式的にいえば

    契約書に甲または乙としての署名捺印(あるいは記名捺印)した者のことです。

    立会人として印を押した人は、契約当事者ではありません。

    実質的にいえは、当事者とは、法律的に効果のあることを約束した人をいいます。

    このように、契約によって義務を負ったり、権利を取得したり、あるいはその他、法律上の効果を生ずるような事を約束するのが当事者です。

    この当事者が誰かということ及び当事者を正確に契約書に表示し、正しい当事者によって署名捺印(記名捺印)をしてもらうことが絶対に必要です。

    個人と法人の区別、夫と妻の区別、親と子の区別、これらをはっきりさせて契約に入ることが大切です。

    2 代理人が契約締結に関与する場合

    代理とは本人に代わって代理人が代理権の範囲内において法律行為をなし、その効果が直接本人に帰属するという制度です。

    これには、法定代理と任意代理とがあり、法定代理人は法律の規定により就任し、あるいは裁判所の裁判によって選任される代理人であり(例えば、未成年者の場合の親権者、後見人、禁治産者の場合の後見人等)、任意代理人とは、本人との間の契約によって権限を与えられた代理人です。

    任意代理人の代理権の範囲は、本人との間の契約によって定められます。代理人は、本人の代わりに契約するものであるから、本人の為にすることを示さなければならないと定めています。

    これによって、契約の交渉・締結に実際上行動した人が代理人であれば、契約の法律上の当事者はその場に出てこなかった本人であるということが明らかにされます。

    以下に契約書における代理人の表示の文例を掲げます。

    文例

    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    売 主 名古屋 太郎

    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    上記代理人 名古屋 花子 印

    一般的な型です。代理人が署名捺印をします。


    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    売 主 名古屋 太郎

    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    上記法定代理人親権者

    父 名古屋 一郎 印

    母 名古屋 花子 印


    これは法定代理人の場合です。後見人が法定代理人として契約をする場合の 表示方法も親権者の場合と同様です。


    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    売 主 大阪 太郎

    株式会社 名古屋支店 支配人 名古屋 一郎 印

    支配人は、商法38条により、営業主に代わり一切の裁判上、裁判外の行為を なす権限を有しますので、代理人という表示をすることは必要ありません。

    ……………………………………………………………………………

    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    売 主 大阪 太郎

    株式会社 営業第二部長 名古屋 一郎 印

    経理部長、営業部長等営業に関しある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、商法43条により、その事項に関し一切の裁判外の行為をなす権限を有するので、代理人であることを表示しなくても、職名を記載しておけばよいと思われます。

    ……………………………………………………………………………

    本人の氏名を明らかにした上、契約締結に当たった代理人が契約書に署名捺印するというのが本則であるが、代理人がいきなり本人の氏名を代書し、その下に本人から預かってきた本人の印を押すという形式をとり、代理人の氏名が契約書に現れない場合もあります。

    これは、本人からそのような形式をとることを許されているときは有効でありますが、後日紛争になった場合に、本人から筆跡が違うなどといって争われる可能性を残します。

    3 会社が契約の当事者となる場合

    各種の会社は、「法人」という名称が示すとおり、抽象的な存在であって、法律が創り出した人格者にすぎないから、現実に会社と契約を締結する場合には、会社を代表する自然人との間で法律行為が行われることになります。

    契約の相手方である自然人が、確かに会社を代表する権限を有しておればよいが、そうでなければ当該契約によって会社を拘束することはできないので、この「代表権限」というものが重要であります。

    契約書上、会社と契約する場合にはその表示を正確にすることが大切です。

    商事会社には、合名会社、合資会社、株式会社、有限会社があります。

    株式会社においては、代表取締役が会社を代表します。

    数人の代表取締役が共同して会社を代表するいわゆる共同代表の定めをおくこともできます。

    契約書において、「取締役社長」という肩書が用いられていることは多く見かけられますが、法律的には必ずしも正確とはいえません。

    けだし、社長という名称を付された取締役が代表取締役であるとは限らないからです。

    有限会社においては、各取締役が会社を代表するが、代表取締役を定め、あるいは取締役が共同して会社を代表すべきことを定めることもできます。

    だれが会社の代表者であるかは、当該会社の商業登記簿に登記されていますので、 その謄本・抄本の閲覧等で容易にこれを確認することができます。 契約当事者である会社を特定するために、商号を正確に表示すること及び会社の本店所在地を明記することが必要です。会社の表示には必ず会社の種類に応じ「合名会社」、「株式会社」等の文字を入れなければならないし、本店の所在地まで正確に表示すべきです。

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    名古屋市××区×××町××丁目××番××号

    売 主 名古屋 太郎

    株式会社 代表取締役 名古屋 一郎 印

    同一人の経営している、いくつかの会社がある場合はどの会社かという区別又会社代表者としての行為か代表者の個人としての行為かが、まぎらわしくされ作為的に会社と個人とを使い分けている人がいますから、これらをはっきりさせ署名捺印(記名捺印)することが必要です。

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    合名会社においては、業務を執行する社員が各自会社を代表するが、業務執行社員の中から代表社員を定めること、数人の代表社員が共同して会社を代表すべきことを定めることができる(商76条・77条1項)。

    合資会社においては、無限責任社員である業務執行社員が各自会社を代表するが、その中から代表社員を定め得ること及び共同代表の定めをなし得ることは合名会社の場合と同様である(商147条・76条・77条)。

    以上のように、代表社員が定められたときは、契約書上も、代表者の肩書は「代表社員」ということになります。

    立会人について 契約書には、当事者でない者が立会人として署名・押印しているのを見かけることがあります。

    これは、実際上契約の締結までの話合いに関係した者が、契約が間違いなく有効に成立したということを保証するためになすものであります。

    契約の効力に影響はありませんが、契約書の信憑性にプラスにはなります。

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